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Selfishly

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素直になれなくて  act1


『 素直になれなくて 1 』





~ 自分が あんまり素直な性格でない事なんて
 多分、誰に言われるより
  俺自身でわかってる。

 本の少しだけ、素直になれたらなと
  思うときが、俺にだってあるんだ。

 そう、本の少しだけ アイツのように・・・。~





アルが懲りずにひらってきた子猫のおかげで
指令室内が賑やかになっている。

動物好きなフュリーは もちろん、
犬以外は 結構、小動物好きなブレダや
余り関心を持たなさそうなファルマンまでが、
集まっては、小さなお客を構っていた。

「大将~、こいつ見ろよー。

 なんか、このふてぶてしさといい、
 目つきの悪いところといい、
 なんか、お前に似てないかぁー。」

面白い事を発見したとばかりに
ハボックが、子猫を持ち上げてエドワードと見比べる。

「あっ、ハボック少尉も そう思われましたか?

 僕も 見たときに、兄さんに似てるな~って思ったんです。」

アルフォンスの朗らかなセリフに、
周囲も 可笑しそうに笑い声を上げて同意を示す。

「そうだよなー、ちっこいナリして
 フーフー毛を逆立ててるとこなんて、
 本当にエドの奴に似てるぜ。」

ブレダは、触ろうとしては 子猫に爪を立てられて
慌てて手を引っ込める。

「しかも、チビなクセにやたらと威勢が良くて
 凶暴なとこまで、お前にそっくりだぜ。」

ハボックは、子猫の襟首を掴んで持ち上げているから
被害には合っていないが、
子猫の愛らしい外見に手を伸ばした者は
皆一様に、あちらこちらに傷を負っている。

「うるせー!
 やたら、ちっこいとかチビとか言うんじゃねえ!
 俺に言ってるのかと思うだろうが。」

エドワードは 先ほどから不満顔で腕を組んで
皆を睨みつけている。

その不貞腐れた表情が、つままれた子猫の不服そうな表情と相まって
更に、皆の爆笑を引き起こす。


「なんだ?
 やたら賑やかだな。」

そこに、出かけていたロイが戻ってきて
集まっているメンバーの中から、
久しぶりに見る姿に目をとめる。

「おや? 鋼のか。
 久しぶりじゃないか。」

エドワード達の方に歩いてゆくと
ハボックが、抓んでいる物をロイに見せてくる。

「大佐、コイツ 大将にそっくりなんですよー。」

ハボックの指の先を見ると、金茶の子猫が
不服そうにぶら下げられている。

抓まれているのを外そうとしてか、
ジタバタと手足を動かしている様子が
いつも、うるさい位元気なエドワードに似てなくもない。

「どれ?」

良く見ようと手を伸ばすと、
周囲から慌てて声が掛かってくる。

「大佐、こいつ凶暴なんっすよ。
 あんまり近寄らない方が・・・。」

途中までの言葉を、ハボックが飲み込む。

ロイが 子猫に触れようと手を差し出すと、
さっきまで暴れていた子猫が、ピタリと動きを止めて
出された手に頬を摺り寄せる。

「あれっ~?
 機嫌なおったのかな?」

それなら自分も触りたいと出したフュリーの手の平を
容赦なくネコパンチを繰り出し、フュリーに悲鳴を上げさせる。

「こらこら、あんまり 悪戯をするんじゃないよ。」

ロイがそう言いながら、ハボックから子猫を受け取ると
子猫は素直に手の平に治まり、
嬉しそうに 喉を鳴らしている。

ロイが、喉元を指で撫でてやると
「ニャーン」となんとも可愛らしい声で、喜びを伝えてくる。

「なんだコイツ。
 大佐にだけ、やたらと愛想いいじゃないか。」

ブレダが、掻かれた手の平を恨めしそうにさする。

「このチビネコ、メスだったのか?」

覗き込もうとするハボックに蹴りをかましながらも
子猫は、ロイに頬擦りするのを止めようとしない。

「ハボック、それは どう言う意味だ。

 お前らより私のほうが、優しいと本能でわかってるからの
 態度に決まってるだろうが。」

なっと子猫に話しかけるようにすると、
近づいたロイの顔に、嬉しそうに頬釣りし
サリサリと小さなベロで、ロイの顔を嘗め始める。

「ははは、こそばいだろうが。」

ロイも、子猫になつかれて
満更でもなさそうな様子で、なついてくる子猫の相手をしてやる。

皆が、悔しがりながら、あるいは微笑ましそうに見ている中
エドワード一人が、輪から外れて無表情に立っては
ロイと子猫を見ている。

そんなエドワードの妙な様子に気づいたロイが
声をかけてくる。

「どうしたんだい、鋼の?」

小さな身体で、ロイに纏わり付いてくる子猫を相手しながら
エドワードの方を見るが、
エドワードは、プイッとよそを向くと「別に」と言ったっきり
顔を向けようとしない。

もう1度、呼びかけようかとロイが思った矢先に
アルフォンスがロイに呼びかけてくる。

「大佐、そろそろ この子猫(こ)を戻してきますねー。」

「あっ、ああ。
 この子猫の飼い主は見つかったのかな?」

「はい、傍に居た人の中で
 ちょうど子猫を飼いたいと思っていた人がいたらしくて。

 僕、皆に見せようと 少しだけ、借り出させてもらったんです。」

離れるのが、少し残念なのだろう
アルフォンスの声には、悔しさが混じっている。

「そうか、ほら 元気で過ごせよ。」

なかなか離れようとしない子猫を、アルフォンスに手渡すと
子猫は 哀しそうな声で鳴き始める。

「なんか、大佐を呼んでるみたいですよね。」

「絶対そうですよ。
 きっと離れたくないんですよね。」

受け取ったアルフォンスも、子猫の様子にオロオロと
慌てた様子を見せる。

「アル、行くぞ!
 さっさと、飼い主に渡してやらないと
 その人も困るだろ。」

アルフォンスに話す時のエドワードの口調にしては珍しく
苛立ち声で声をかけると、さっさと扉に向かっていく。

「あっ兄さん待ってよ。

 あっ、じゃあお邪魔しました。

 子猫を渡したら、また 戻ってきますんで。」

慌しく走り去っていくアルフォンスの姿に、
皆が 呆気にとられたように見送る。

「大将、どうしたんすっかね?

 俺ら、なんか悪いことでもしましたかね?」

「さぁ?」

皆が不思議そうに首を傾げながら考え込むが
特に思い当たる事もなく、
そんな事も、バタバタと過ぎる日々に
皆の記憶から流されていった。


それから、数ヵ月後。

それは、突然のアルフォンスからの電話で始まる。



**********************************************


 ~ 為りたい者に為れる。

 そんな子供騙しの言葉に馬鹿らしいと思いながらも、
 ふと考えてしまったモノ。

 本当は、いつも笑ってくれた時に
  俺も笑い返したかった。
 
 滅多にない優しい言葉に
  本当は、ちゃんとお礼を言いたかった。

 そして・・・、そして、少しだけ 傍に寄ってみたかった。
 
 いつも、机1つ分の距離を開けている俺達の関係から
  もう少しだけ・・・。

 そう思った時、アイツの事が頭に浮かんできた。~




****


「大佐、アルフォンス君からお電話です。」

隣の部屋からかけられた言葉に、わかったと返事を返し
ロイは 点滅する外線を見る。

エドワードは、よく アルフォンスに定期連絡を入れさせる。
自分の不精を押し付けているのが丸わかりで、
ロイは、その度毎に苦情を言うが 彼が聞き分けてくれた事はない。

『これは、1度 きっちりと言わなくてはいけないようだな。』

ロイは内心で、そんな呟きを落としながら
受話器を持ち上げる。

「私だが。」

『・・・・。』

「何かあったのか?」

いつも律儀な挨拶をする彼らしくもない沈黙に
何やら トラブルの予感が動く。

『・・・大佐、そこに誰か居ますか?』

「嫌・・・、今は居ないが・・。」

どう返事をしたら良いかと戸惑いながら伝えると、

『お願いします! 助けてください。
 兄さんが 妙な事になっちゃってるんです!』

いきなりの悲愴な叫びに、思わず 耳に当てていた受話器を離す。

「な、なんだね、一体。

 また、鋼のが 妙な事にでも首を突っ込んだりしてるのか?」

『詳しくは ここでは言えません。
 取り合えず こちらに来てもらえませんか?』

礼儀正しい彼にしては珍しい無遠慮な願いからも、
余程、彼が動揺している事がわかる・・・わかるが。

「そこにと言っても、私も まだ勤務中だ。

 勤務外まで待てないのか?」

鋼のなら、多少の事は自分で解決が出来る。
その上、
軍のメンバーに知られたくないと言う事は、
プライベートなトラブルなのだろう。
なら、少しは痛い目を見た方が彼の躾上必要な事も考え
ロイは、そう聞いてみた。


『待てません!
 僕、ここまで来るのにも決死の思いで来たんです。

 とにかく、すぐさま何とかしないと・・・。
 僕、嫌です 兄さんが・・・兄さんが
 こんなになっちゃって~。』

さめざめと泣くアルフォンスの声には、心底 困り果てたのであろう
悲愴感が濃く伝わってくる。

「・・・わかった。
 で、どこまで行けばいいのかな?」

『大佐!
 ありがとうございます!!

 僕ら、今 イーストのいつもの宿に居るんです。
 僕は、部屋から 出れないんで、宜しくお願いします。

 あっ、兄さん 駄目だよ!』

受話器がガチャンと放り投げられたのだろう、
ロイは 耳を離しながら、渋い顔をする。

仕方無さそうに出かける準備はするが、
実は 然程、気にかける事もない事だろうと高を括っている。
また、エドワードが 無茶をしてアルフォンスの気を揉ませているのだろう。

『全く あの子供は、無茶を専売特許に いくつ持ってるやら。』

アルフォンスが ロイを頼ってくるまでの事はさすがに気にはなったが、
無鉄砲なエドワードの事だ、アルフォンスの手に負えない事も
たまにはあるのだろう。
あの金色の子猫のような子供には、ロイも散々手を焼かされてきた。
なかなか懐かない小動物のように、
いつも ロイの前では 毛を逆立ててては、
事ある毎に、威嚇をしてくる。
もう少し、普通に出来ないのかと あきれもするが、
それが面白くて、ついついからかってしまうのは自分なので、
エドワードの態度が、なかなか軟化しないのは自分の責任でもあるのかも知れない。

そんな事をつらつらと考えながら、アルフォンスの待つ宿までの道を歩いていく。

『なら、懐いたら どんな風なんだろうか?』

と思わず逆を考えてみる。

いつも目の前では、仏頂面か生意気な表情しか見せないが、
アルフォンスや その他のメンバーの時に見せているような
笑顔を自分に見せたら?

『・・・案外、可愛いかも知れないな。』

思わず その笑顔を想像して、頷いてみる。

いつもは、自分の姿を見つけると 天敵来襲の如く
構える彼が、素直に寄って来たりしたら・・・。

『・・・少々、嬉しいかも知れない。』

と その想像に満更でもない気にさせられる。

ロイは、そんな有り得もしない考えを頭一つ軽く振ると
流しさる。

『まぁ、天地がひっくリ返っても、そんな事はあるまい。』

そう結論をつけて、見えてきた宿に待つトラブルに対応できるよう
頭を切り替えていく。

・・・・ そして、そんな天地がひっくリ返る様な事が
        待っているとも思わずに・・・・・・・



********************************************


~ 『もう少し、君の弟を見習いたまえ』

 何度、言われたか知れない言葉。

 その言葉を聞く度に、胸にズキリと響く痛み。

 アルの奴が、素直で礼儀正しくて、いい奴なのは
 俺が1番知っている。

 きっと、あいつも アルフォンスみたいな子供が好きなんだろうな。

 俺みたいに、意固地な人間じゃない奴が。

 そんな考えが浮かぶ度に、俺は 何だか、重っくるしい気分になる。~


 
*****

ロイが宿に着くと、予めアルフォンスが伝えておいてくれたのだろう、
彼らの部屋を教えてくれる。

エドワードの収入なら、もっと良いホテルにも宿泊できるだろうに
彼が 取る宿は、いつも 小奇麗だが質素な宿が多い。
意外なように思えるが、彼らの倹約てきな姿勢は、
潤沢な研究費を莫大な浪費に使う国家錬金術師達が多い中
いっそ、清清しい程に綺麗に思える。

まぁ、そんな所も 気に入っている1つではある。

目の前の どこにでもありそうなシンプルな扉をノックする。

「はぁ~い、すぐ、すぐ行きますー!」

中からは、待ちかねていたのだろう
打てば響くような返事が返る。
それと、妙な 会話が・・・。


「あっ!駄目だよ兄さん、
 そんな窓から出ようとしちゃあ、ここ 2階~!!」

そんな会話が、さして厚くもない扉から漏れ聞こえてくる。

「窓? 
 鋼のは、一体 何をしてるのやら?」

首を傾げて待つこと数十秒、急いで開けられた扉に
引き込まれるように入れられると、
急いで扉を閉められる。

「大佐~!
 一体、どうしたらいいんでしょう。

 僕、もう 僕、本当に困ってしまってー。」

いきなり泣きつかれて、ロイの方が驚いてしまう。

「ま、まぁ、落ち着きなさいアルフォンス。

 とにかく、鋼のは ここに居るんだろう?」

なら、安否は保障されているわけだ。

そんな事を思いながら、さして広くもない部屋を見ると・・・、
ロイが硬直したように動きを止める。

そこには、椅子に縛り付けられ
ご丁寧にも猿轡まで噛まされたエドワードの姿があった。

「アルフォンス、君は 一体何を・・・。」

これは新手の遊びか何かなのか?
戸惑うロイの様子に、アルフォンスが慌てて弁解をする。

「仕方なかったんです。

 兄さん、少しでも目を離すと逃げ出そうとするし、
 今の状態で、外に出ちゃーダメって言っても
 きかないし。」

が、いくらきかないとは言っても、これはあんまりではと
ロイが エドワードの拘束を外すように言う。

「じゃ、じゃあ、何があっても驚かないで下さいね!」

強く念を押してくるアルフォンスに押されたように
ロイも頷いて返事を返す。

が、こうして縛られたエドワードを見ても
特に 普段と変るようにも病気や怪我をしているようにも見えない。
縛られた椅子ごと引きずり倒しそうな勢いでもがいているのをみると、
かなり元気な様子だ。

アルフォンスが、慎重に猿轡を外すのを
ロイは、ここに入って以来、気を飲まれたようになっているまま
一歩引いて様子をみる。

猿轡が外されたとみたや、エドワードが怒声を・・・ではなく、
鳴声を上げる。

『鳴声・・・?』

ロイは、愚かしくも 思わず周辺を見回す。
この狭い部屋に、他に生き物が居ないことなど
入ってきたときからわかっていたのだが、
思わず 今 聞こえた声と、目の前のエドワードの様子とが
上手く、頭で結びつかず 思わず、その他の要因を求めてしまう。

その間にも、何やら訴えてくるような鳴声は
まさしくエドワードの口から発せられている。

「・・・アルフォンス」

一瞬にしてエドワードの状態を理解したロイが
重々しく名前を呼ぶと、
アルフォンスは、同様に重々しく頷く。

「・・・そうなんです、大佐。

 兄さん、ネコになっちゃったんです。」

ロイは、痛んできた米神を押さえながら
ニャーニャーと泣き叫ぶ、ネコもどきを呆然と眺める。



「実は僕ら、ある街で『人の夢を叶える』人物が居ると言うんで
 そこを訪れて行ったんです。

 で、行ってみると 全然、僕らが探していたものとは違ってて
 しかも、なんだか胡散臭くて怪しげだったんで、
 兄さん、ちょっと そこで、その人と言い争いっちゃって・・・。」

二人は 2脚しかない椅子に交互に座り、
互いに向きあって、ここまでの顛末を話して聞かせていた。

「・・・なるほどな。
 で、それが どうしてこうなるわけなんだ?」

そして、ロイには ぴったりと抱きついているエドワードを目で示す。

エドワードは、縛られれいるのを開放されるや否や飛び出すかもと
危惧していたアルフォンスを他所に、
一目散にロイに飛びついて、その後は大人しくロイに抱かれている。

飛びつかれた本人は 慌てて離そうとしたが、
邪険にされても懲りずに纏わり付いてくるエドワードに観念し
今は 好きなようにさせている。

「どうも、それが 催眠術だったらしくて、
 兄さん、売り言葉に買い言葉で 

 『じゃあ、俺がなりたいものにしてみろ!』
 
 って啖呵きっちゃって。」

気まずそうに状況を語るアルフォンスに気を使うのも
馬鹿馬鹿しくて、ロイは 大きなため息を吐く。

「で、ここまでの経緯はわかった。

 まぁ、何故 為りたいものがネコだったのかは
 置いといて、

 その術者に解いてもらわなかったのか?」

スリスリと嬉しそうに頬を寄せてくるエドワードに
ロイは 少々、嫌 かなり 戸惑いを感じながらも
頭を撫でてやっている。

「そっそれが、その後
 ネコ化した兄さんが 大暴れ始めちゃって、
 やたら滅多ら家具に当るわ、その後 家まで崩壊させちゃって。

 その術者も、腰を抜かして 逃げちゃったんです。」

エヘッと外見に似合わない可愛い仕草で、
首を傾げるアルフォンスの様子に
ロイは、更に 深々とため息を吐くしかなかった。

「で、これをどうしろと。」

これとは、もちろんエドワードの事だ。

「はい、僕 考えてたんですけど、
 とにかく、その人に元に戻してもらわないと
 どうしようもないと思うんです。

 でも、兄さん こんなになっちゃっても
 錬金術は使い放題だし、
 危なくて 他の人に任せるわけにもいかないし。」

ロイはアルフォンスの話に、難しい表情で頷く。
錬金術の使えるネコもどき・・・なんて物騒なものを
おいそれと人には託せない。
が、軍を使って探させるのには
まずは、エドワードの事を公表するしかなくなるだろう。

それは、エドワードの立場を考えると少々、拙い。
軍での少佐クラスの人間が、催眠術に引っかかって
ネコになっちゃいましたなんて、前代未聞の醜聞だ。

話し込んでいる二人の目線が交差する。
そして、ロイは あきらめたように返事を返す。

「わかった、君が その術者を探し出してくるまで
 私が 鋼のを預かればいいわけなんだな。」

ロイの苦渋に満ちた返事を聞いて、
アルフォンスは 嬉しそうに頷く。

「そうなんです!
 もう僕、預けれる人間って考えて
 大佐しか浮かばなくて。

 急いでその人を探してきますんで、
 その間、宜しくお願いします。」

礼儀正しく、そして 性急に頭を下げて頼むアルフォンスの心情には
断られる前にお願いしちゃえな感じが臭ってくるが、
まぁ、それは仕方が無いだろう・・・エドワードが こんな有様では。

「わかった、それまでは預かろう。

 ・・・出来るだけ、早めに頼むよ。」

力なく肯定を告げるロイに、アルフォンスは何度も頭を下げながら
早速と、出て行った。

部屋に残された二人・・・、一人と一匹は
ロイの苦悩も知らずに、幸せそうなエドワード。

ロイは、嬉しそうに笑っているエドワードの頭を撫でながら
苦笑を浮かべながら話しかける。

「まぁ、こうなったのも何かの縁だ。
 
 とにかく、我が家にご招待しよう。」

そう言って、エドワードを抱き上げて立ち上がる。

抱き上げられて嬉しかったのか、エドワードはニャーンと
返事のような鳴声を上げた。





 













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